所信表明
「Debian 開発者の会」(以下 Debian JP) 2003 年度の理事に立候補します。
Debian JP の方向性を今後どうしていくべきかを考えています。
現行の Debian JP の役割は、次のようなものに集約されると思われます。
1. メーリングリストによるユーザー・開発者の情報交換。
2. Web や各種ドキュメントの翻訳、パッケージの国際化。
3. debian.or.jp ドメインやミラーホスト、商標の維持。
4. JP 独自のパッケージの提供。
5. Debian.org との協調。
このそれぞれと、今後の組織構成について、私の考えを述べていきます。
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1. メーリングリストによるユーザー・開発者の情報交換について
メーリングリストについては日本で Debian の情報交換をする上での重要な
拠点となっており、今後とも継続していくべきものだと考えています。
なお、選挙関連については会員に限らず一般ユーザーの自由闊達な意見、候
補者への (あるいは候補者どうしでの) 意見や質問を求めるために
debian-vote 的なメーリングリストを用意して、private ではなく公開された
形で議論を進めるようにしてもよいかと思います。
2. Web や各種ドキュメントの翻訳、パッケージの国際化について
Web やドキュメント翻訳、DDTP などの作業をされている方々にはつくづく
頭がさがります。DDTP では debconf メッセージの翻訳も検討されています
し、この作業を含めてドキュメント関連にはぜひ支援していきたいと思いま
す。どういった支援が必要であり、Debian JP が組織としてどのような協力
ができるのか、意見を聞きながら活動を行いたいと考えます。
また、以前にも検討されたことがありましたが、日本語で Debian.org パッケー
ジについてのバグ報告を受け付け、それを翻訳して Debian.org の BTS に送
るという作業チームを結成できないかというものがあります。チームの負荷
とインセンティブが難点ですが、うまく機能させることができれば、日本にお
ける Debian の敷居を下げ、Debian の品質向上にも充てられるのではないか
と考えています。
これらの Web、ドキュメントおよび国際化で活動されている方については、
できるだけ Debian JP 会員になってくださるよう呼びかけたいと思います。
3. debian.or.jp ドメインやミラーホスト、商標の維持について
debian.jp ドメインを取ったままでまだ使っていないという現状があるので、
これを何か活用できないか考えたいと思います。
また、VAJ 様より貸与していただいたマシンが 2 台、NOC との調整ができ
ずに未だに未使用というもったいない状態にあります。これを早急に改善で
きるよう努力したいと思います。
Debian JP の資産管理については、現行の名義は個人のままでいくか、
Debian JP 自体を法人化すべきか、あるいはその他の方法を探るかで少々迷い
があります。
現状では個人のままでもそれなりに十分なのですが、公的支援なども最近は
増えており、何らかの法人格を得ていたほうが活動しやすいという面はあり
ます。ただ、NPO については現行の法律からさらに後退しそうなので、がん
ばって特定 NPO 化しても課税対象になってしまっては意味がありません。
SPI に類似する NPO 組織、たとえば FSIJ
がその役割を果たしてくれそうであれば、寄付金
の扱いについてはそちらに委託するという手もあるかもしれません。
4. JP 独自のパッケージの提供について
現行 Debian JP としては特定の公式リリースを出していませんし、私もリ
リースをしようという意思はありません。ほとんどの開発者は NM (New
Maintainer) 制度およびスポンサー制度が機能しているので Debian.org に
活動の場を移行し、JP にあるパッケージの多くは野ざらしになっている感
があります。
いずれにしても、Debian JP がそれなりの責任を保有するものが「勉強用」
のままでは困りますし、パッケージを Debian.org でなくても公開したいと
いう場合、何らかの Web スペースを手に入れるのは現在ではそれほど難し
くないことだと考えます。
Debian JP はパッケージの提供場所としての役割はやめ、Debian.org での
メンテナの活動を促し、助力する役割への転換をさらに強めるべきではないか
と思います。
これに伴って、Debian JP にパッケージを置きたいというだけの動機での新
規の会員受け付けは原則的に停止し、Debian.org で活動している方、活動
しようという意思のある方を優先して会員に誘いたいと考えます。
5. Debian.org との協調について
Debian.org から見て Debian JP は、日本の団体として知名度はあるようで
す。ただ、支部であるとかサブプロジェクトであるとかいった形ではなく、
あくまでも「何かやってる」くらいのイメージです。
私は、Debian.org ともう少し密接な関係を築いていきたいと考えています。
具体的な部分はあまりまだ良い考えが浮かばないのですが (あったら教えてく
ださい)、サブプロジェクトとして登録するのは自己申告でだいたい通るよう
なので、せめて前述の組織図の中の「ユーザサポート」の「日本語」として入
れてもらうよう運動するくらいはしたいと思っています。
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さらに組織案について述べます。
6. 会則について
現在、会長・副会長・事務局長については当選者の互選によるものとなって
おり、日本的ではありますが、これによって投票による会員の意思表現が薄
くなってしまう、緊迫感がない、といった弊害を生んでいるように感じます。
改訂案として、Debian.org のように、会長 (プロジェクトリーダー)
および監事のみを選挙によって選出し、副会長 (あるいはそれに代わる名前。
要は会長が不在の際の代行) および事務局長については会長が指名 (再任は
さまたげない) という形にしたいと考えています。また、これに伴って会長・
監事の任期を現行の 2 年から 1 年に短縮します。これらは大きな会則変更
となります。
これにより、たとえば、選挙がもっと活性化する、事務局長が数年かかる長
期的なプランを実行できる、といったことが実現できるかと思います。
7. 組織構成について
Debian JP の組織は、どのような場合は誰にコンタクトを取ったらよいのか、
という部分が見えにくいように思います。
がちがちの組織を作るつもりはありませんが、Debian.org にある組織図
に類似したものをまずは
Debian JP でも用意できるとよいかと考えています。
JLA や FSIJ などの外部組織との連絡役もすで
に数名おられますが、そういう方々も組織図に明記し、どのように Debian JP
が外部と関わっているかについても広めていきたいと思います。
また、広報が現状いないので、会長兼任などの形で設置できればと思います。
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経歴
1999年 〜 2000 年度を監事、2001年 〜 2002 年度を副会長として活動しまし
た。それ以前については前回の所信表明
にあります。
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武藤 健志@Debian/JPプロジェクト (kmuto@debian.org, kmuto@debian.or.jp)
日本Linux協会 (kmuto@linux.or.jp)
株式会社トップスタジオ (kmuto@topstudio.co.jp)
URI: http://www.topstudio.co.jp/~kmuto/ (Debianな話題など)